機械式時計に精通されている方ならご理解されているかもしれませんが、大半の方は「ヒゲゼンマイ」が何なのか分からないと思います。
ヒゲゼンマイとは機械式時計の心臓部であるテンプを構成するパーツの一つであり、精度を決める重要な役割を持つ部品です。
今回はヒゲゼンマイが何なのかを詳しく解説していきますので、既にご存知の方はおさらいとして、知らなかった人は新たな知識として是非ご一読くださいませ。
上の画像は時計用語で「調速機」と呼ばれるテンプ一式です。
テンプは天針によってムーブメント本体に固定され、ヒゲゼンマイの先端にある”ヒゲ持ち”と、中心の円柱金属にはめられた”ヒゲ玉”を支点として伸縮を繰り返します。
ヒゲゼンマイが伸縮をすると、テンプは車輪のように左右に回転運動をはじめ、他の歯車やパーツに1秒間に1回針を進めさせる振動を与えます。
この振動こそが、時計の精度に繋がるわけです。ちなみに、現在主流のテンプ振動数は「1秒間=8振動」であり、1秒間に8回左右に振れることで、正確な時間を刻むような設計が多いです。
ざっとテンプとヒゲゼンマイの役割について説明しましたが、ヒゲゼンマイの伸縮がなければテンプは動くことができず正確な時間を刻めなくなります。
そして、一見ただの金属の糸に見えるヒゲゼンマイですが、実はヒゲゼンマイの製造は、時計製造技術のなかでも最も難しいのです。
ヒゲゼンマイは精度を決める最重要な部品となるため、どの部品よりも精密に作らなければならず、「成型する工程・熱処理を施す工程・長さの調整」に至るまで、何一つ妥協できません。
特に長さや巻きの強さには、髪の毛1本の直径の約100分の1に相当する100ナノメートルの精度が必要となります。
この精度を創り上げるためには「最高の設備」に加え、「熟練の技」が求められますので、一部のトップメーカーにしか製造できないのが現状です。
時計の精度不良の原因の一つとしてヒゲゼンマイの絡まりというのが挙げられます。これは時計に衝撃が生じた際に発生するものですので機械式時計を身に着けている時は激しい運動などは控えることで時計を長持ちさせることができます。